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2010年03月04日(Thu) AM 00時00分
アルベルト・トンバを泣かした男
今回のオリンピック、イタリアアルペンスキーチームはぱっとしないまま、最終種目である男子スラロームを迎えた。期待されていた、男子大回転、女子スラローム・・・メダルを一個も手にすることなく、最後の望みは今絶好調の25歳のジュリアーノ・ラッツォーリ(愛称ラッツォ)に。
ゼッケン8番でモエルグがスタート。2シーズン前にワールドカップのスラロームで種目別総合優勝を成し遂げた彼だが、ここのところ、今一つ・・・いくつか小さなミスを犯したが、スラローム1本目終了時には5位に。
期待のラッツォ。ゼッケン13番。なんて不吉な数字、と思ったのは私だけではなかっただろう。
最初の3旗門目までは、心配になるほどゆっくり滑る(実は後で、解説者の説明でこれが戦略だったとわかったが)。
彼の、雪面からスキーを極力離さない滑りは、力ではなく、技の滑り、という印象を受ける。完璧な滑りで48秒弱のレースで、2位に0,43秒の大差をつけ、1本目トップに立つ。
ゴールして、自分がラップを取ったとわかり、両手を広げ、そして満面の笑みを浮かべる。大騒ぎするわけでもなく、その喜びをじっとかみしめる彼。
ワールドカップと違い、100人以上の選手が滑るオリンピック。2本目のスタートまで4時間近くの待ち時間があった。
イタリアアルペンスキー界の期待をすべて背負って、4時間がどれだけ長く、重かったことだろうか?
監督は彼に言った:皆まわりの人は、大丈夫、心配するな、優勝できるって応援してくれるだろうけど、何しろ何か食べて、一人でいるように、と。
スラローム2本目スタート。1本目30位だった選手からさかのぼってタイム順に滑る。
1本目5位で、メダルを狙っていたモエルグはリズムに乗れず。オーストリアのライヒもメダルを逃す。
その時点で、コステリッチがトップになり、残すはラッツォのみ。
テレカメラがスタート台を写す。私は、大写しになるガチガチになっているラッツォを待っていた・・・ところが、スタート台にはだれもいない。スタート台のテントの奥から、彼が現れる。それは、まるで謁見室に現れた王様のようであった。おごそかでさえあった。
なんて、素敵なんだろう!
世界が今、彼に注目しているのだ!これからのたった1分にも満たないその一瞬を!
確実な滑りを展開。斜面の切り替えでも完璧な滑りで、その時点で0,35秒優位にたつ。
解説者の札幌オリンピック時代の名スラローマ、パオロ・ディ・キエーザも解説することを忘れ沈黙。
何か、口にしてしまったら、すべてが壊れてしまいそうな怖さがあった。
ゴール前で、私は彼の金メダルを確信した。
ゴール手前で、解説者、パオロ・ディ・キエーザは解説者という任務を忘れ、TVのマイクに向かい、突っ込め~と叫ぶ!
0,16秒差でゴール! 勝った、勝ったあ~~~!
その瞬間、ゴールにいたアルベルト・トンバは両手をあげ、ガッツポーズ。
彼の頬に涙が伝わる。
あの、トンバを泣かすことができた男:それがこのジュリアーノ・ラッツォーリ
涙を隠すために、サングラスをかけるトンバ。
トンバも今や、43歳。22年ぶりにイタリアスキーアルペン界に金メダルをもたらした選手が、自分と同郷であるエミーリア・ロマーニャ州出身という、雪とは縁が薄い土地。どれだけうれしかったことか・・・
ちなみに、4年前のトリノオリンピックで、当時絶好調で金メダル候補でありながら、スラローム1本目でスタート直後に途中棄権をしたジョルジョ・ロッカがラッツォのマネージャになることに決まった。ラッツォとロッカ、ワールドカップ転戦中は、ルームメイトであった仲。
25年近くイタリアに住む私。私の身体の中には、少しイタリアの血も流れているような気がする・・・
ありがとう、ラッツォ。
http://www.giulianorazzoli.it/
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イタリアより食とワインと山の魅力を
作者:ワイン・チーズを通してイタリアの食文化を知る
1986年よりイタリア在住の筆者がイタリアのワイン、チーズ、食文化をご案内します。イタリアソムリエ協会のソムリエ、イタリア人にとっても難関のオフィシャルテースター(Degustatore Ufficiiale)、そしてイタリアチーズテースター協会(ONAF)の資格を持つ食のエキスパートです。
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